鍋島翁の爺通信

白秋 – 人生稔の秋です

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クレイネス曲線ー着陸の難しさー

今日、やっと無事に3名のうつ病の方が安全に着陸態勢に入ることができたようだ。それは、ドイツのクレイネス医師が1972年に「Psychosomatics」という雑誌に記載したクレイネス曲線である。つまり、彼によれば、内因性うつ病の回復期に、気分の揺れが激しくなってくる現象を記載した。極期では、寝る食うの生活が続くので、自殺のリスクの心配はないが、現実が見えるようになると、そのリスクはかなり高まっていく。パイロットの操縦に例えれば、目的地についたのはよいが、着陸態勢に入るには、上空を何度か旋回し、高度を下げていかなければならない。その時期を考えながら、患者さんが無理をしないように、時間をかけて、私たちは見守っていくし、制御する必要がある。


 1名の方は、30歳代の女性で、自尊感情が著しく低下して、何度かメールを自殺念慮を伝えてきたが、今日は、やや笑顔で、自ら「まだ、私、安心できないから」と夫に語ったが、私は安心した。1名は、自尊感情を維持するために、早く仕事に就かなければと焦って、小型バスの運転手として職を見つけたが、私は「人の命を支える仕事は控えた方がよい」と何度も律した。今日は、バスの運転手の仕事は諦めました。もう少し考えて、安全な仕事を探しますと答えてくれて、私は安心した。もう一人は、子育て中に、うつ病となり、同時に国家資格の受験も重なり、今は子育てに専念した方がよいと律してきたが、今日、合格の知らせがあり、無事、着陸態勢に入った。
 うつ病に陥った方は、自分の自尊心が傷ついて、その修復に無理をすることが多い。私は、同様の体験をしており、そこで、回復過程であまりにも早急に着陸しようとすると、失速し、墜落。つまり、自殺である。うつ病の治療の難しさは、回復期を無事に現実につないでいく作業が、精神科医には要求される。


 今日は、ほっとした。3名がやっと無事に着陸できそうだと感じたからである。この3月から4月上旬、毎年、気温の変化が激しく、うつ病の方の気分も激しく揺れる。また、私の不安も最大となる。今日は眠れそうである。

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