
なんでも相談クリニックに60歳前後の職人が受診しました。彼の仕事は自動車の塗装。悩みは「工場から辞めさせられようとされている」という内容でした。永年、塗装を専門にしているから、65歳定年まで働きたいと思っていましたが、工場長が変わって、その部門から外され、これまで築いてきた技術とは関係のない部門に異動させられ、意図的に窮地に追い込まれていると涙ながらに語りました。

どんな職場も、60歳を越えると待遇は変化していくでしょうね。自分の経験も踏まえて、透明な気持ちで、私は話を聞きました。新しく赴任した工場長は、中途半端な知識をもっている方の声が高く、いかにも「自分は知っている」かのような錯覚に陥っている方を応援しているようでした。また、工場長も、自分を越えるような存在は組織のリーダーに危機感をもたらすので、知識や経験のある人間を「ダメ人間」にして、仕事を取り上げ、存在感を無くし、自然に退職へ追い込む、というスタイルの相談はこれまで何度か経験したことがありました。この現象は、滅びゆく組織の典型的な例だといえるでしょう。

しかし、繁栄していく組織にも特徴がありました。その組織の特徴は3点にまとめられます。
⓵職員同志の信頼感が厚い、②職員同志が業務内容が異なっていても尊敬(リスペクト)しあっている、③基本的な人間愛、から構成されているような気がします。特に、組織の代表は、リベラルで、お互い水平線上で語り合うことができます。しかし、自信のない管理者は、自分がトップでなくては不安に陥るため、その防衛機制が働き、周囲に圧力をかけ、辞めさせる口実を作り、自分の安定を図っているように見えます。情けないリーダーとしか、言いようがありません。また、能力の低い方はそのリーダーに媚びるような態度を示し、グルになって、組織を維持しようとする傾向があるようです。
いずれにしても、周囲の人は気づいていると思われますが、気づいていないのは、工場長とその身近な言うことをきく職員のみ。徐々に、みんながバラバラになって、いろんな問題が生じる結末となります。それは、経験しないとわからないでしょうね。

そのうつ状態に陥った経験深い職人の方は、案の定、今年3月末に退職しました。自信が持てる仕事を現在、探していますが、年齢の問題もあり、新しい職場は見つからず、現在もうつ状態。50㏄のバイクを購入し、しばらくエンジョイしたらと勧めていますが、どうも、仕事にこだわり続けているようです。皆さんなら、彼にどうアドバイスしますか?薬では難しいようです。