
院長代理を務めて、約2ヶ月が経過した。院長は52歳で開業し、すでに21年が経過した。透析を始めて、10年が過ぎた。院長はその体で、よくも第一線で、このような地域医療の現場で戦い続けたことを、私は実体験の中で感じた。
ところで、50歳頃の職業婦人が突然来院した。職場でのハラスメントである。どうも正論が通じない様子だった。上司は、周囲の好都合な部下をまとめて、本人をやめさせようとしているという悩みだった。その女性は、警察官の夫がいたが、他界された様子だった。夫の正義感でこれまで支えられてきた。しかし、世の中、矛盾だらけで、正論が通ることはほとんどない。正直者は排除される可能性が高い。私も、かつて、職場の会議で、「お互い信頼しあい、リスペクトしましょう」などと正論を唱えると、この場で、なぜそんなことを言うのか、という具合で、白けた雰囲気になった。
その婦人の話に同情し、「そうですね。あなたのおっしゃることは正しいですよ」と共感すると、涙がとめどもなく流れた。正直(正論)が通じない社会。それは、この診察場だけの問題ではない。あらゆる場所で起こっている。
院長に伝えたい。十分休んでください。地域医療で多くの方を救ってきたという正論は、自分の身体を蝕み、馬鹿をみるという結果に及んだが、私は今、診療が終わり(1日40名~80名)、自宅にそのまま寝込んでしまう毎日を鑑みると、正義を押し通すことがいかに困難か、その体験を日々重ねている。今日は、久しぶりのお盆。静かに心と体を休めている。
