鍋島翁の爺通信

白秋 – 人生稔の秋です

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留学生の心理相談からみた日本・韓国・中国における人間関係

 日本人の人間関係は最近、変わりつつある。本来は田畑を中心として生活する農耕民族、島国民族、定住民族であり、法治主義によって社会が維持され、規則をしっかり守っていく社会であった。日本人がどう見えるかを数名の留学生に尋ねてみた。「日本人は人間関係において相手との調和や気持ちを察し、いつも他人の考えに気を配りながら、人間関係を維持している。自分の本心を表現せずに、曖昧な表現をするのが礼儀だ」と思っているように見えるようである。韓国の留学生は日本人と比較すると、より自分の考えや心情を人の前でそのまま表現し、単刀直入的な傾向が強いが、中国人も同様である。中国人、日本人、韓国人の人間関係をわかりやすく大豆で喩えると、それぞれ「大豆一粒」、「納豆」、「味噌」と表現できるだろう。日本人の人間関係は納豆のように糸を引いている豆で、それぞれの形は保っているものの、糸を引いているため、ねばねばと絡み合う義理人情至上主義が強い。地域で目立たないように生きていくには、同調・調和といった相手の気持ちを察する力が必要とされる。一方、中国人における人間関係は「自我中心」、韓国人における人間関係は「儒教・年功主義」などに象徴されるが、アジアにおける国際問題の背景には、このような人間関係における微妙な差異があるからであろう。


 日本人と留学生の心理的な悩みにも違いがある。日本人に多いのは、周囲から自分がどう見られるかという過剰な意識に悩む「対人恐怖症」がある。最近では「こうしなければ・・」という強迫的傾向から、「もう両親や先生の期待に応えきれない」といううつ状態も多い。韓国の民族的な心の病気として、「火病」がある。憤怒症候群とも呼ばれるが、文字どおり「怒りの抑制」に原因がある。症状としては、不眠、疲労、パニック、切迫した死への恐怖、不快感情、消化不良、食欲不振、呼吸困難、動悸、全身の疼痛、心窩部に塊がある感覚などを呈するが、自分の言いたいことが言えない状況で生じる病気である。中国人の悩みとしては、心身の不調を「脳」の働きで感じることが強いようで、「神経衰弱」という診断がある。WHO(世界保健機構)が提出しているICD-10(国際的な診断基準)では,中国を配慮して今でも「神経衰弱」という診断を残している。


 日本人の人間関係はどう変化しているのか?米国に影響を受けているためか、米国で10年以上前から問題となっている「境界性パーソナリティ障害」の悩みを抱える学生が増えている。すなわち、極端から極端に行動する学生で真ん中がない。適当に人間関係が維持できづらく、見捨てられるのではないかという不安に怯えている。心理的な距離が近すぎたり、離れすぎたりで情緒不安定であり、人と適当につきあうことができないパーソナリティ上の問題である。すなわち、納豆ではなくて、大豆一粒のバラバラな人間関係が好きなように見えるが、本当の大豆一粒になれない学生が増えているのである。この社会的な現象は、韓流映画の人気にも反映されているようだ。現在の日本人は大豆一粒では寂しいのか、韓流映画に象徴される味噌型人間関係に癒しを求めて中和され、日本人本来の「納豆型人間関係」を取り戻したいと叫んでいるように私には見えてしまう。

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